MONOKIRI 35mm

フジフイルムのカメラを中心にモノ切りブログ

「XF500mm F5.6」を見てきた話

XF500mmF5.6 R LM OIS WR

 

フジの野鳥撮影 “最後の砦”XF500mm F5.6の超望遠単焦点レンズ。タイのフジフイルムショールーム『X-Space』に置いてあるという事で、自分のX-T5とTamron150-500mmの超望遠ズーム、メモリーカードなんかも持って見に行ってきました。

 

自分のX-T5に、それとショールームにあったX-H2sにも装着

左は僕の使ってるTamron 150-500mm f5-6.7


手に持ってすぐに感じるレンズの軽さ。XF500mm F5.6はとにかく軽い。重量約1335gで、僕の使ってるTamron150-500mmは約1710g。重さで言うとちょうどX-M5とか小型カメラ一個分ぐらいの違いだけど、持った時の重さは大分違うように感じる。ただレンズの長さはX Summitなんかの動画や、ネットの画像で見るよりも実物は長さを感じる(255.5mm)。フードを外しても僕の使ってるTamron150-500mmより5センチぐらいは長いのかな。別に撮る時はレンズが長くても良いけど、カメラバッグなんかは少し大きいのが必要になるかもしれない。

 

タイでの発売は11月下旬。価格は12万バーツ(日本円で54万円)いかないくらいとの事。日本での価格は471,900円(税込)。もし買うなら日本行った時になるけど、とりあえず僕の結論としては『現状では買わない』。あくまで現状では。

 


<写りについて>

XF500mm F5.6で撮影

Tamron 150-500mmで撮影

XF500mm F5.6で撮影

Tamron 150-500mmで撮影


どちらも500mmの開放(F5.6とF6.7)でRAWで撮影して、家でLightroomで書き出し。ショールームの中から適当に外を撮っただけだけど、Lightroom上で写真を拡大して散々細かく確認して大体の感じはわかった。XF500mm F5.6はレンズの色収差(画像周辺部に被写体の輪郭に沿って発生する青色や紫色のパープルフリンジてやつ)がほとんどというより、ほぼ全く出ない(Tamron 150-500mmは出ます)。

 

左がXF500mm、右がTamron 150-500mmで縁部分に青い滲みが出る


トリミングして被写体を大きくすることもある野鳥撮影では野鳥の羽毛だったりディテールの解像具合のほとんどがこの色収差のあるなしが大きく影響すると思ってて、ズームレンズより単焦点レンズの方が色収差は出にくい傾向にあるようだけど、600mm F4なんかでも野鳥の縁部分に青い滲みが出ることはあって、ショールームから撮ってみた感じではXF500mm F5.6の写真はどれもそれがなく、実際の野鳥撮影でも解像した野鳥の写真が撮れるんじゃないかとそこは期待が持てる。

 

<ボケ感について>

少し気になったのはXF500mmがちょっとバブルボケ(背景のボケた部分が泡状に写ること)しそうかな?ってとこ。

 

左がXF500mm、右がXF150-500mm。赤丸の当たりに若干バブルボケを感じる。


このバブルボケはシャープなレンズに出やすい感じがしていて、フジのXF70-300mmやXF150-600mmも写りはシャープだけど、その分背景がけっこうぐるぐるとバブル状にボケが出てしまう事が多い。バブルボケは鳥を大きくトリミングする場合なら気にならないけど、少し引きで背景も一緒にした途端すごい気なるので(僕は好きじゃない)、XF500mmで撮った写真も「ちょっとバブルボケしそうだな」みたいな印象を感じた。ただフジフイルム公式ページのサンプル画像を見ると、あまりバブルボケ要素を感じないので(500mmの焦点距離でのF5.6のボケ感でバブル要素を消せてる可能性はある)、こればっかりは実際の野鳥撮影に持って行ってみないとわからないかも知れない。

 

▼フジ公式のサンプル画像

fujifilm-x.com


ちなみにTamron150-500mmは撮影の角度によってたまに二重線ボケ(細い枝が二重に写ったりするような)が出ることはあるけど、バブルボケはどんな状況でもほぼ出ない。そこは僕がTamron150-500mmを気に入ってる要素の一つ。

 

背景がバブルボケしてる白さぎの写真(XF70-300mm撮影)

少し極端に背景が二重線ボケしてしまった写真だけど、ぐるぐると泡状のバブルボケはしてない(Tamron 150-500mm撮影)

 


<機能面について>

XF500mm F5.6のスイッチ類


XF500mm F5.6のフォーカスリミッターはフル、最短~5M、5M~無限遠に設定できる。僕が使ってるTamron150-500mmは10M~無限遠なので、例えば僕がカワセミを撮影する所だと10Mより手前の枝にくることがあって、その場合はフォーカスリミッターの制御でAF速度を上げることができないので、リミッター位置が5Mなのは良いと思う。正直野鳥撮ってるとこの差は大きい。

それとXF500mmには「フォーカスプリセットボタン」というのがあって、あらかじめ決められたフォーカス位置を記憶できる。例えば枝にいる鳥とかのピントが抜けた時にボタン押してすぐにピント位置を記憶させた場所に戻ることができて便利(XF150-600mmにも付いてる)。ただマニュアルのピントリングは回し幅が大きくてちょっとやりずらかった。Tamron 150-500mmの場合は、プリセットボタンが無い代わりにピントリングの小回りが利くので、瞬時にピント調整ができる。ここら辺は一長一短な気がする。

 

<手振れ補正について>

左がXF500mm、右がTamron 150-500mmの500mm側での最短撮影


XF500mm F5.6は5.5段の手振れ補正で、最短撮影距離(2.75m)で撮影をしていて感じたけどスッと止まる感じで数値以上に手振れ補正の効きの良さを感じる。この点はTamron 150-500mmの500mm側での最短撮影(1.8m)で手振れを抑えるのは至難の業なので(野鳥撮影では問題ない)、はっきりわかるレベルで違いがあった。


ただXF500mmの最短撮影距離の2.75mってけっこう被写体から遠い。野鳥撮影で困ることは無いだろうけど、花とか昆虫を撮る場合は大分離れないといけないので、花を近くで見ながらというよりは遠くから撮影に徹する感じになると思う。超望遠という言葉通り遠くを撮るためのレンズなんだなと改めて感じる。Tamron 150-500mmは150mm側だと0.6mまで寄れるので、花とかバッタとかトンボ撮るなら最強ズーム。

 

蓮の花に近づいて撮影(Tamron 150-500mm撮影)



そしていよいよ、、肝心のAF性能で僕は思った。



<AF性能について>

XF500mm F5.6は“0.33秒の高速で高精度なAF性能”らしいけど(正直0.33秒が速いのかどうかはわからない)、X-T5に付けて触ってみた感じTamron 150-500mm f5-6.7とそんなに変わらない。

 

後ろの木から前方向に飛んできたカワセミにAFが合従せずボケてしまった写真。フジのAFが最も苦手とするシーンの一つ(Tamron 150-500mm撮影)

横に飛ぶこういうのは2、3コマは合います(Tamron 150-500mm撮影)


AFの追従性能はXF500mmの方が少し上かなと感じたけど、AFの合従速度は逆にTamron 150-500mmの方が速いかもしれない。Tamron 150-500mmはシュッ・ピッて感じだけど、XF500mmはボワン・ピッという感じ。一度合ったものはXF500mmの方が追従してくれるかも知れないけど、Tamron 150-500mmで合従しきれないスピードのものはXF500mmでも合従してくれないかも知れない。


前方向に飛んでくる鳥にAFを合わせたり、水面に飛び込んだ瞬間にAFをONにして合わせたり、そういったAFの合わせ方はTamron 150-500mmも決して得意ではないけど(と言うよりフジのAFがだと思う)、XF500mmにしたからと急に良くなる感触は触ってて僕はまったく感じなかった。

 

 

【結論】

XF500mm F5.6をX-H2sに付けた状態


結論として僕は現状ではXF500mm F5.6は買わない。現状ではというのはX-T5やX-H2なんかの第5世代のAF性能のカメラを使ってる間ではという意味(ただ可能なら一度レンタルして野鳥撮影に使ってみたい)。フジでは一番AFが速いとされてる積層型のX-H2sにも付けてみたけど、これで撮れるものが大幅に上がるとは思えなかった。XF500mm F5.6を使ったら野鳥の解像感は良くなるかも知れない。それは何となく感じた。だけど解像感が良くても撮れなかったら意味がないわけで、現状のフジのカメラで今以上の野鳥の飛翔撮影を求めるのは難しいんじゃないかというのが、XF500mm F5.6を触ってみて感じた僕の正直な感想と結論。

 

何となくだけどフジは次のX-T6やX-H3、X-H3sなんかでAF性能が今のソニーニコンに追いつくんじゃないかと想像してる(これは全く一緒という意味ではなくて、今のソニーニコンのAF性能で撮れるものと同じものは最低限撮れるところまではいくんじゃないかという意味)。つまりXF500mm F5.6のレンズは次の世代のカメラを見越して出されたレンズなんじゃないのかなって。“0.33秒の高速で高精度なAF性能”も次の世代のカメラで十分発揮してくれるかもしれない。

 

ただ、来年の1月とか2月なら良いけど、まだ当分先なら僕はちょっともう待てないかも知れない。撮影に出掛けて落胆して帰る日々がさすがにちょっと苦しいので,, 色は良いんだけどねフジフイルム。

 

僕が使ってるフジのXマウント用レンズ

▼旅先用ズームレンズ

▼フジを知るための入口用

▼ライブ写真撮影用

▼星景写真用(マニュアルレンズ)

▼野鳥撮影用

僕が使ってるフジの4000万画素ミラーレスカメ

▼フィルムシュミレーション知るには持っておきたい本

 

「XF500mm F5.6」を見てきた話でした。

 

▼見て頂きありがとうございました。